ここまで撮影の手の内を露にしたので読んでる皆さんは 理解が進んでいると思いますが ルックの設定は映画撮影の進行の中で基本の始まりであり 思索の方法論です。撮影設計は、撮影しようとする個人の数だけあり 写真術のスタイルなのです。使いたいフイルムと γのコントロールの為の現像時間のコントロールが我々撮影部の参加する世界があります。監督の描く世界にいかにシンクロできるかが 撮影者の楽しみなのです。結果はスクリーンが証明してくれます。私の好みは、γを抑えた映像です。この好みは槌橋監督と同じ感性でした。 カラー撮影 ここで次ぎにカラー撮影に関して今回の作品の思い出を書こうと思います。 カラーの問題は まず写り過ぎることにあります。綺麗で隅々まで映像化する事は、けして狙いの映像とは考えられない時があります。心象風景の撮影の場合は、特に(カラーの)ルックが必要と考えます。いかに映像に持ち味を設定できるかと考え監督と 討論を重ねて各シーンに適切な撮影方法を設定しました。 カラーフイルムは困ったことに 感度を変更してもさほどγは変化しません。 ただ平行移動だけです。フイルムは、7277と7245の性格の異なるフイルムを使用しています。海の光柱のカットは7245での素直な気持ちでドキメント撮影に徹しました。7277のほうは作品の最後の祠の中の蝋燭の灯された人物カットに使用しています。このカットは蝋燭のみの撮影にむなっています。それ以外の心象風景のカットはフイルターワークで色相をかえてルックを設定しています。 現在のフィルムについて感じていること 現在のフイルムでの映画撮影の為のフイルムに関して今感じている事を書きます。2000年現在の世界でFUJIFILMは8mmフイルムは世界で富士だけが生産そして現像をしています。KODAKは 現在生産停止になっています。今回の白黒映画の撮影のフイルムは 富士の場合ネガFG/FH/FS/RPと4種類でポジは71337/72327があったが FG/RPの注文生産になっているが 現実には生産撤退と考えざるをえない。それにFGフイルムのベースがカラー対応していないのでプレッシャープレートの圧を調節しなければならなくて 不調の状態で使用するとループが上が詰まり下にたまってしまうので 撮影は、不安のある撮影になってしまう。一方のKODAKは、以前は PX/WX/4Xと3種類のネガが有りましたけど 現在生産されさるのは PX/WX の二種類です。高感度の4Xは 現在有りません。ただ4Xは 粒状性能が悪いので、市場から退場したと考える事もできます。KODAKはフイルムをカラーフイルム対応しているのでプレッシャー圧を変える必要は有りません。現実には、KODAK一人舞台の状態です。アグフアとイルフォードは既に撤退しています。KODAKの映画に対する生産者責任は大変なものがあります。 ネガとポジの現在の傾向にかんしても書きます。ネガは種類が増え選択の幅はふえてます。FUJIのF-250以来KODAKのほうはVISIONの出現で γが寝たネガが中心になっています。直線性のたかいネガはEXR50Dなどが有りますが現在のγの寝たのが時代の中心になっています。それを受けるポジフイルムは、その逆の傾向のてす。EXRカラープリントは 以前よりγが立ってきています。ビデオの出現で時代は 変化していますがフイルムの正論を維持してほしいものです。γを寝かしたデリケイトなネガでデリケイトな再現のできるポジを生産して欲しいものです。 『TRUTHS: A STREAM 』を御覧になった幸運な観客のかたに撮影のメモをおくります。これから映画を自主制作しようと考えているまだ見ぬ友人に撮影の無事と初号の楽しい映像世界を思い ペンを置きます。
撮影担当 中本憲政
Japanese Index
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